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プロの仕事はどこが違う?IMAGICA Lab.が描く「ポスプロの未来予想図」#3

ノートパソコンやスマートフォンでも手軽に動画編集ができる今。誰もが作り手になれる時代だからこそ、ポストプロダクションにはプロフェッショナルにしかできない高クオリティな仕事が求められます。そこで、IMAGICA Lab.の現役社員4人が座談会の締めくくりに選んだテーマは、「プロフェッショナルとアマチュアの違い」。4人がさまざまな動画を見ていて、「気になってしまう」ポイントとは?

座談会メンバー
菊田 和弥/IMAGICA Lab.経営管理本部 経営企画部 技術戦略担当 エグゼクティブスーパーバイザー
鈴木 敬典/IMAGICA Lab. TVプロダクション事業部 制作部 赤坂EDグループ課長補佐、エディター
久慈 匡教/IMAGICA Lab. TVプロダクション事業部 制作部 品川MAグループ課長、ミキサー
宍戸 佑樹/IMAGICA Lab. CMプロダクション事業部 クリエイティブグループ エディター、コンポジター

心地よい余白が没入感を生む隠れたポイント

――SNSや動画配信サイトには、プロ が作ったものから個人がスマホで作成したものまで、さまざまな動画があふれています。

鈴木:やはりプロが編集しているものは一目でわかりますし、反対に個人の方が作ったものは「もったいないな」と思うところが目につきますね。これはもう職業病かな(笑)。

宍戸:どんなところが気になりますか? 僕はCMのエディターという仕事柄、権利関係が心配になっちゃうことが多いです。仕事では、著作権を侵害していないか、常に細心の注意を払っているので……。著作権や肖像権などの知識は、専門職のみならず、動画制作をするすべての人の必須リテラシーになるかもしれませんね。

菊田安全で信頼できる動画作り、という視点は、ポストプロダクション にはなくてはならないもの。一方で、個人で動画制作を楽しむ方には、まだ意識が薄いポイントかなと思います。

鈴木:僕がいちばん気になるのは「尺の余裕」ですかね。個人の作品には、動画全体の時間=尺に対して、情報量が多すぎるものがたくさんあると感じています。たとえば10分の動画で、10分間みっちり話し続ける人が映っていたとしたら、見ているほうはけっこう疲れますよね。適度な余白がないと、視聴者が窮屈に感じてしまって、伝えたい情報が100%伝わらないんです。

バラエティ番組を中心に、多くのテレビ番組の編集を担当する鈴木さん

――途中で疲れて視聴をやめたくなる動画は、もしかしたら余白がないのかも?

鈴木:そうですね。カットの切り替わりも余裕を持ってつないでいくことがポイントで、矢継ぎ早に詰め込んでいくと、なんとなく違和感があったり、集中できないと感じる原因のひとつになります。

宍戸:カメラを複数台使って収録しているときは、色味やコントラストを合わせるのも重要なポイントですよね。

鈴木:まさに! カメラが切り替わるたびに、色味が変わったり、明度が違ったりすると、知らず知らずのうちに集中力が削がれてしまうんです。視聴者が没入できる映像を作るためには、そのあたりの調整もおざなりにしてはいけません。

神は細部に宿る! 細かい調整でプロ仕様に

――スマホの動画編集でも、テロップまで手軽に入れられるようになりましたね。

鈴木:テロップも気になります。文字は見やすく、伝えたいイメージの色になっているか、装飾は品のいいものになっているかって、やはり映像の印象を大きく左右するんですよね。また、僕たちプロは、文字と文字の余白も調整しています。

菊田:同じフォントでも、文字の組み合わせによっては間があきすぎたり、狭すぎたりすることがあります。プロは、これを全部調整しているんですよね。

鈴木:そうなんです。記号やアルファベットは、漢字やひらがなと比較すると少し小さくなるので、それを全部同じ大きさに見えるように整える。これはアシスタントエディターが最初に学ぶ、基本のキです。

――音声や音響効果については、いかがですか?

久慈:視聴環境がさまざまなので、どのデバイスでも聞こえるように、というのは注意するポイントですね。「スマホで視聴していたらまったくの無音なのに、テレビで再生すると心臓の鼓動の効果音が入っていた」といったことは、実はけっこうあるんです。パソコンやスマホは、低い音の再現は苦手なんです。そうした微調整も、やはりプロとアマチュアの違いになるのかな、と思います。

宍戸:デバイスによって画角も違いますしね。16:9、4:3、SNSなら1:1もあるし、縦用の9:16というタイプも。我々はまず基本のマスター版を作ってから、媒体に沿ったものにデータを変換し、レイアウトも差し替えています

新たな映像表現の開拓も!

――便利なツールやソフトウェアの登場で、誰でも手軽に動画を編集できるようになりましたが、やはりプロとの間には歴然とした違いがあるんですね。

鈴木:確かに、ただ作るだけなら誰でも簡単にできるようになりました。しかし、高品質で安全で、感動するレベルのものをめざすなら、やはりそこにはプロのスキルが必要だと思います。一方で、プロとアマチュアの距離が近づいていることも紛れもない事実です。だからこそ、我々プロならではの価値を高め、提供していかなければならない、と気持ちを引き締めています。

菊田:IMAGICA Lab.では、グループ会社のフォトロンと協働しながら、新技術の開発などにも積極的に取り組んでいます。新しい映像表現、我々にしかできない表現にも果敢にチャレンジして、価値を高め続けていきたいと考えています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


本記事は2024年1月に実施したインタビューをもとに掲載しております。最新情報とは一部異なる可能性もございます。


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