映像表現におけるクリエイティブとテクノロジーの可能性を探る
IMAGICA GROUPは、エンタテインメント分野から産業分野まで、"映像”に関するサービスをグローバルにワンストップでお届けしている企業集団。
最先端の映像表現を追求した「ライブエンタテインメント事業」も手掛けています。
コロナ禍で激変したライブエンタメ業界ですが、音楽イベントやコンサートなど、リアルライブの体験価値が”再認識”され、市場は回復傾向を辿っているといわれています※1。
今回は、グループ会社のP.I.C.S.(ピクス)やIMAGICA EEX(イマジカ イークス)を中心に展開する「ライブエンタテインメント事業」に関わる4名が集まり、クリエイティブとテクノロジー、両面からグループの強みのひとつ「エンタメテック」をひもときます。
いままでとこれからの映像表現の可能性について2回連載で語ります。
※1 出典:ライブ・エンタテインメント市場は力強く回復。2023年予測値は前水準より一段の上振れ濃厚/ ぴあ総研が2022年確定値公表、及び将来予測値を更新
※2 エンタメテック:「エンタテインメント」と「テクノロジー」を組み合わせた造語。
映像を活用したエンタテインメントの可能性は無限大
今回集まったのは、IMAGICA EEXの代表取締役CEO兼 CCOの諸石治之さんとCOOの早川正祐さん、P.I.C.S.で映像プロデューサーを務める諏澤大助さん、フォトロン執行役員兼技術開発本部長の久保田純さんの4名。まずは自己紹介を兼ねた各社の取り組みの説明から始まりました。
諸石「IMAGICA EEXを設立したのは、2020年7月、まさに新型コロナウイルス感染症がまん延しているさなか。音楽ライブなどのリアルイベントに規制がかかり、無観客での開催を余儀なくされるなど、人が集まることのできない状況で、社会全体として、エンタテインメントの未来に不安を抱えていた時期でした。その中で、、クリエイティブやテクノロジーを駆使することで、映像を活用した新しいエンタテインメントの可能性があるのではないかと感じ、我々グループの力を結集して新しいエンタテインメントを作り、人の心に驚きと感動を届け、社会を豊かにしていきたい。そんな経緯から、新しいライブエンタテインメントの創出を目的に、IMAGICA EEXは設立されました」
IMAGICA EEXは、クリエイティビティと最先端のテクノロジー(ライブビューイング、5G、動画配信、AR/VRなど)を融合させた新しい映像体験機会を創出。多数のプロジェクトを通して実施してきました。このEEXの設立をきっかけに、IMGICA GROUPではクリエイティビティと最先端テクノロジーを集約し、「エンタメテック」事業領域を重点分野の一つとしてグループを挙げて成長を目指しています。
諸石「IMAGICA EEXのコンセプトは、クリエイティブとテクノロジー、リアル、バーチャル。これらを縦軸にも横軸にも組み合わせ、新しい経験をデザインしていく。それが私たちの取り組みです。
コロナ禍で、エンタメのスタイルは多様化し、楽しみ方の選択肢も増えましたよね。オンラインライブ配信の市場が立ち上がり、どこにいてもスマートフォンなどで気軽に視聴することができますし、メタバースのような仮想空間で、遠くに離れている人ともコミュニケーションを取りながら楽しむこともできるようになった。さらに8Kや12Kなどの超高精細映像などテクノロジーの進化によって、臨場感ある映像を届けられるようにもなっています。
さらに、そんなコロナ禍を経て”リアル”での体験価値は一層強まりましたよね。
テクノロジーとクリエイティブの表現は、日々アップデートされ、市場は拡張しています。エンタテインメントのフィールドは、テクノロジーやデジタルと組み合わせることで、物理的な制約を超え、リアル空間、そして、サイバー空間との共生が可能です。
この動きは都市開発にも連動しており、クリエイティブとテクノロジー、リアルとバーチャルを融合することで体験価値を高めるような施設もオープンしています。
我々も参画させていただいた、虎ノ門ヒルズ ステーションタワー高層部にある“TOKYO NODE”もその一つです。「世界に向けて発信する都市」をコンセプトに、イベントホール、ギャラリー、レストラン、屋上ガーデンなどが複合するまったく新しい情報発信拠点です。
”リアル”で体験することの価値と、サイバー空間やデジタルと繋げることで、新しい体験としての可能性は無限に広がると思っています。
IMAGICA GROUPで映像表現をコアにしているからこそ、エンタメテックのフィールドを世界にも広げていきたいと思います」
メタバースはライブエンタメのバリアフリー化を推進
さらに、コロナ禍で加速した”メタバース体験”を経て、人々の多様性を受け入れる姿勢が寛容になったのではないかと語るのは、IMAGICA EEXのCOO 早川です。
早川「ライブエンタメの目的は“体験”です。IMAGICA EEXでは、コロナ禍で人がリアルで集まることを制限されている中でも、ライブエンタメを楽しめるようメタバース活用にいち早く取り組んでまいりました。コロナ禍で注目されたメタバースですが、このメタバースでのコミュニケーションの「体験」を経て、ユーザーの皆さんの「多様性を受け入れる」意識が一層高まったように思うのです。たとえばバーチャル空間上では、アバターとしての自分を作れる。その空間の中では容姿や年齢や性別、LGBTQなども関係なく、本来の自分ありのままで楽しむことができます。ライブエンタメのバリアフリー化に繫がったように認識しています。そんな経験もあったからこそ、メタバースの延長線上の現実世界でも、人の「多様性」を受け入れやすくなったんじゃないかと思うのです。社会の豊かさにつながっていると思います」
そして、コロナ禍のオンラインライブを経てVR・XRなどの映像技術はより一層進化したと語ります。
早川「また、コロナ禍ではオンラインライブを余儀なくされた時期もありました。現在は以前の水準に戻りつつありますが、このオンラインライブによる恩恵は「映像テクノロジーの進化」だと思っています。リアルライブでも新しい空間演出として活用されるようになりました。
そういった技術を活用しIMAGICA EEXでは株式会社NTTドコモ・スタジオ&ライブ様が開催した都市型音楽フェス「STARLIGHT TOKYO 2023」でリアルとバーチャルが融合した空間映像演出を実施しました。都会の星空や光をテーマにした、都市型音楽フェスですが、従来のライブ体験の一歩先をいくような、「アトラクション的音楽体験」を重視したものです。アーティストとファン、両方の相乗効果で初めて完成するような、そんなライブ体験を目指しました。これまでもこれからも、リアルとバーチャルをクロスオーバーさせた新しい体験を提案していきたいです」
テクノロジーでクリエイティブを支える
そんな進化した「テクノロジー」を支えているのがグループ会社のフォトロンです。
フォトロンは、ハイスピードカメラ、CAD、放送映像システム(Avid、EVS、Vizrtなど)、映像ネットワーク、医用画像システム、教育映像システム、光学計測といった多岐にわたる分野で、お客様の業務フローに最適な製品群を先進のシステムとしてまとめ上げ、付加価値の高いご提案とご導入支援・運営サポートをグローバルに展開しています。
久保田「私は、フォトロンで開発責任者として技術開発部門を担当しています。また、IMAGICA GROUPのAdvanced Research Groupにディレクターとして参加し、グループのテクノロジーを活かしたコラボレーションを考えています。
グループでの役割は、軌道に乗ったプロジェクトをテクノロジー面からしっかり支えていくこと。そして次にどのようなテクノロジーがあるか、世の中から仕入れ、次の新しい製品・サービスそして事業につなげていくことです。
具体的には、最近氾濫しているAIは本当に使っていいものか、着目しているテクノロジーに新規性があるか、実際の業務に使えるものなのかなど、テクノロジー面の検討や活動をサポートする仕事です。
たとえば、AIには単純作業などを任せて効率化を図れば、人間は浮いた時間でよりクリエイティブな作業に没頭できる。そうすればよりクリエイティブなものが生まれてくる。逆にAIですべてをやろうとするアプローチは、プロフェッショナルな映像制作を生業とする我々には向いていない。AIとの棲み分けは必要ですね」
テクノロジーを料理するのがクリエイターの役割
諏澤は、株式会社ピクス(P.I.C.S.)の映像プロデューサー。ミュージックビデオやコマーシャルの他、デジタルサイネージ、プロジェクションマッピング、ライブ演出など、“16:9”の枠にとらわれない多岐にわたる映像作品を手がけてきました。2012年に東京駅丸の内駅舎保存・復原工事の完成を祝して行われた、国内史上最大規模の3Dプロジェクションマッピングイベントの映像制作を主導したことでも知られています。
諏澤「P.I.C.S.はさまざまな映像体験の創出に携わっています。IMAGICA GROUPでは、いわゆる映像プロダクションの立ち位置になりますね。IMAGICA EEXにも参画し、リアルとバーチャルが組み合わさった映像表現の追求に関わっています」
諏澤「先ほどのお話から皆さんが、最先端のテクノロジーにアンテナを張っていることがわかります。一方、僕らP.I.C.S.が担うのは、そのテクノロジーを使ってクリエイティブ面でどのように表現していくか、という部分です。見る人に楽しんでもらえるように、テクノロジーをどう“料理”してライブエンタメとして映像表現に落とし込んで伝えていくか、そこに重きをおいて制作しています。映像制作会社にいながら「映像」だけにとらわれず、空間全体の演出も手掛け、映像はあくまで一つの武器として扱うような立ち位置で動いています」
諏澤「諸石さん・早川さんのお話にあったとおり、コロナ禍があったこの数年で、映像を取り巻く環境は大きく変わりました。テクノロジーが進化し、場所や時間を問わず、好きなときに好きなものをチョイスできるようになりました。と同時に、僕らの仕事の領域もすごく広がりました。それまでの映像コンテンツは、テレビを基準に、16:9の枠の中でどう見せるかを問われていましたが、プラットフォームが増えた今、枠を超えた幅広い映像表現が求められるようになっています。リアル以外の選択肢ができたからこそ、リアルでのエンタメをオンラインでどのように提供するかが、新しい課題になりました。さらに、コアなファンだけではなく、いわゆるライトファンにもエンタメが届くようになったので、その方たちにどのように楽しんでいただくかも、考えていく部分だと感じています」
諸石「エンタテインメントはずっと昔からあるものですが、テクノロジーやクリエイティブ表現の進化によって、どんどん変容しています。諏澤さんが手がけた東京駅のプロジェクションマッピングは、日本における大規模なプロジェクションマッピングの先駆けでしたよね。諏澤さんは空間映像演出の第一人者であり、P.I.C.S.の表現の幅が本当に広いと感じました。IMAGICA GROUPには多彩な事業会社があります。言わばたくさんの絵の具(才能)があって、混ぜ合わせながらいろいろな絵(ビジョン)が描ける。表現できるキャンバスも本当に大きいんです。
この先も、新しいテクノロジーとクリエイティブが混ざり合うことによって、私たちが触れられる映像体験はさらに進化していきます」
IMAGICA GROUPは、テクノロジーを生み出すことに強みを持つ集団と、多彩なクリエイティブ表現に長けた集団が関わり合い、多彩な映像表現を提供しています。この強みを活かし、まだまだ成長領域である新しいライブエンタメの実現を加速してまいります。
AI時代の映像表現や"人間”に求められる技術や能力はどんなものか、メンバー四人でディスカッションした第2回は以下からご覧ください!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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本記事は2024年2月時点の情報をもとに掲載しております。最新情報とは一部異なる可能性もございます。