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IMAGICA Lab.が描く「ポスプロの未来予想図」#01

映像サービスをとりまく環境は、大きく変わりつつあります。さまざまな動画配信サービスが登場し、視聴環境もテレビにパソコン、スマートフォン、タブレットと多様化。誰もがテレビを見ていた時代はすでに過去のものとなり、新しい映像の時代が到来しています。

2023年11月に開催された、日本随一の音と映像と通信のプロフェッショナル向け国際専門展示会「Inter BEE」においてIMAGICA Lab.は、IMAGICA Lab.が描くポスプロ未来予想図をテーマに企画セッションを行いました。今回はその時のメンバー5人のうちの4人が再集結。

変革の時を迎えている今、国内最大級のポストプロダクション(以下、ポスプロ)であるIMAGICA Lab.のメンバー4人が「ポスプロの未来」を本気で語ります。


ポスプロってそもそもなんだ?

座談会メンバー(写真左から)
菊田和弥(きくた かずや)/IMAGICA Lab. 経営管理本部 経営企画部 技術戦略担当 エグゼクティブスーパーバイザー
鈴木敬典すずき たかのり)/IMAGICA Lab. TVプロダクション事業部 制作部 赤坂EDグループ課長補佐、エディター
久慈匡教(くじ まさのり)/IMAGICA Lab. TVプロダクション事業部 制作部 品川MAグループ課長、ミキサー
宍戸佑樹(ししど ゆうき)/IMAGICA Lab. CMプロダクション事業部 クリエイティブグループ エディター、コンポジター

――まず、ポスプロの主な業務から教えてください。

菊田:映像制作のあとのほうの工程、ざっくりいうと映像編集、音声編集、最終仕上げといった部分を担当するのが、ポスプロです。IMAGICA Lab.はテレビ番組、映画※、CMなどのポスプロとして、90年近くの歴史があります。

※IMAGICA GROUP内の映像制作サービス事業の再編により、現在のIMAGICA Lab.では、テレビ番組、テレビCM等のポスプロ事業を担っており、映画のポスプロ事業はIMAGICAエンタテインメントメディアサービスに引き継いでいます。

鈴木:その歴史のなかでもとくにここ十数年の変化は大きいですね。映像編集のツールが様変わりし、以前は高額な機材がなければできなかった作業が、ノートパソコンやスマホでもできるような状況に。映像編集の裾野が広がっています。

菊田:20年前、編集室を1室整備するのには、かなりの金額をかけての設備投資が必要でした。IMAGICAにしかない機材、設備が、当社の大きな価値だったわけです。ポスプロの設備産業としての側面は失われつつありますね。

宍戸:ワークフローも大きく変わっています。以前はフィルムやテープ、ディスクで納品していたものが、いまではデータファイルでの納品。オンライン送稿も普及してきました。素材がデータになったことで、作業効率も格段に上がり、ワークフローはぎゅっとコンパクトになっています。

映像制作とAI

――使い勝手のいい編集アプリや生成AIなどの登場は、ポスプロにとっては脅威でしょうか?

鈴木:確かに制作会社が内製する部分も増え、我々に任される作業範囲は狭まっています。現状維持のままでは、衰退につながってしまうという危機感はありますね。ただ、ポスプロが安心・安全な映像制作の仕上げを担う砦のような存在であることは変わりありません。プロフェッショナルな品質が求められる案件はこれからもなくならないでしょう。

菊田:テレビだけでなく、多くの配信プラットフォームが利用されている今、作られる映像の全体本数は増加傾向のはずですからね。

久慈:そこにどうアクションしていくかですよね。また、映像業界に限らず一般的に「AIに仕事を奪われる」ということが盛んに言われますが、私は積極的に活用していくことで、逆によりクリエイティブなモノづくりができるのではないか、と思っています。

宍戸:CM編集の現場では、たとえば「ここの青、もっといい感じに」といったリクエストが入ることが多くて。「いい感じにヒヤッとさせて」「ここはファッって動かしたい」とかですね。たぶんAIは、こういった感覚的な指示を汲み取るところまではいかないと思うんですよね。

鈴木:そうそう、映像って対話のなかで作り上げていくものなんですよね。クライアントさんと「いい感じ」の感覚を共有できていれば、気持ちいい映像作りができるし、それが指名にもつながります。経験を積みながら、そうした感性を研ぎ澄ませていくことが大事です。

進化するツールを使いこなして

――制作現場でAIが活用されている事例もありますか?

宍戸:AIの自動生成素材を使って作られたケースもありますが、まだ試験段階。メインで使うという方針にはなっていません。

菊田:当社では生成AIのガイドラインを策定し、リリースしています。権利関係などに十分に留意しながら、「安全に活用する」という意識を持つことが重要です。いずれ業界内のルールも各所と連携してより整備していく必要があるだろうと考えています。

久慈:AIは便利ではありますが、まだ最終的には人の手による調整が必要です。4分ほどの短尺の映像に生成AIでナレーションをつけたことがありますが、MA※には通常以上の時間がかかりました。AIで入力した声はパッと聞くと自然に聞こえるのですが、ナレーションとしてはニュアンスの微調整が必要な箇所が多くて。改めてナレーターさんってすごい、と感じましたね。新しいツールをどう使いこなしていくか、まずは我々技術者がいち早くチャレンジし、その特性を理解しながら提案していくことが重要だろう、と思いますね。

※MA…Multi Audio(マルチオーディオ)の略。編集後の映像にセリフ、効果音、音楽を加え、それらの音をバランスよく調整する業務

宍戸:確かに! AIは自動学習して精度を上げていくといいますが、我々もAIの使いこなし方を学習する必要がありますね。AIが担ってくれる部分を見越して、いかに効率よく高品質でクリエイティブな作品を作れるか。これからのポスプロの肝になっていく部分だと感じます。

久慈:そうした観点では、ポスプロ業界を牽引してきたIMAGICA Lab.の企業力は強みですね。映像関連の機材やソフトウェアを扱うメーカーとのつながりも深く、新しいツールやソフトについての情報もいち早く入ってきます。

菊田:編集現場のニーズをメーカー各社に伝え、開発に活かしていただくこともあります。また、当社発案の企画を、IMAGICA GROUPのフォトロンが開発する、という流れもあります。現時点で世の中にないもので必要なものがあるならば、自分たちで作る。そうしたマインドも、我々の強みだと考えています。

次回は、IMAGICA Lab.のエディターが独り立ちするまでの関門、「メイン試験」について赤裸々トーク。ポスプロの人材育成の秘密を明かします。お楽しみに。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

本記事は2024年1月に実施したインタビューをもとに掲載しております。

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