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「ライトアニメ」で、漫画の新しい楽しみ方を提案する|イマジカインフォス社長・前田起也インタビュー#3

TVアニメ『薬屋のひとりごと』の原作小説の出版社としても注目される、イマジカインフォス。同社を率いる前田起也は、IP創出を加速させることを大きなミッションと位置付けています。イマジカインフォスだからこそできるIP創出とは? 3回連載の最終回となる今回は、前田が仕掛ける新しいIP※ビジネスをテーマにお届けします。


※IP:Intellectual Property(知的財産)の略。

コンテンツを立体的に展開する

株式会社イマジカインフォス 代表取締役社長  前田 起也(まえだ たつや) Profile:1995年に主婦の友社に入社。ファッション誌「mina」副編集長、「cawaii」編集長を経て、書籍部門へ。美容・ファッションを中心に多ジャンルの編集を手がける。2014年より取締役に就任。2019年に主婦の友インフォス(現・イマジカインフォス)の常務取締役に。2023年4月より現職。

「本が売れない」「雑誌はネット情報にとって代わられた」とはよくいわれていますが、いまだ出版社が持つ雑誌、書籍の持つパワーは大きいと思っています。
世界観が確立されたコンテンツには、熱狂的なファンが集まる。

弊社の雑誌『声優グランプリ』や『S Cawaii!』 も、個性の確立した唯一無二のコンテンツだと自負しています。毎号の特集内容はもちろんのこと、声優やアニメ、ファッションを愛する“ファンダム”の集う場所としての役割も期待されています。今 後は、ファンが集う器、場所としてより存在感を強めていきたいと考えています。

たとえばイベント、ライブ、舞台、展示会、また雑誌から派生するファッションブランド展開など、雑誌のコンテンツをどんどん立体化していく。すでに人気声優の衣装展など、我々だからこそできる大型のイベントの実績もあり、ファンの支持を集めています。

ファンダム:アニメ・映画・スポーツ・アイドルなどの愛好家である「ファン」と、フリーダム・スターダムなどの領地や勢力範囲を意味する接尾語「ダム」を組みあわせた言葉で、さまざまな分野における熱狂的なファン同士の集団を指す。

臨場感あふれる「音」にこだわる、新しいアニメ制作

IPビジネスのもうひとつの軸は、映像化です。

2023年4月にアニメ制作部門「イメージワークス」を事業譲受し、出版社でありながら、映像制作機能を併せ持つようになったことは、我々の大きな強み。大日本印刷と協業し、弊社の電子コミックをはじめとする豊富な作品群を「ライトアニメ®︎」として映像化し、放送・配信していきます。

ライトアニメとは、漫画やWEBTOONの原稿からパーツを取り出して色をつけ、エフェクトなどの演出、音声や音響効果などを加えて制作される新しい手法のアニメです。漫画の原稿をそのまま活かすことで、コストは従来のアニメ-ションの10分の1に、制作期間もぐっと短縮できるのが大きな特徴です。

漫画の原稿を動かすから、当然ながら原作の世界観はそのまま。さらに、そこに一流の声優陣の演技がのるわけで、仕上がりは決して安っぽくはありません。

声優陣のキャスティングには、30年の歴史を持つ「声優グランプリ」が大きな役割を果たしています。雑誌で築き上げてきた声優さんとの関係性があるからこそ、新しい試みであるライトアニメにも、人気声優をキャスティングすることができるわけです。

目を閉じていても脳内に物語が立ち上がるような臨場感あふれる音作りが、ライトアニメのポイント。漫画の新しい楽しみ方を提案します。

ライトアニメ第1弾としてお送りする作品は、2024年度に放送を予定しています。

『未来の黒幕系悪役令嬢モリアーティーの異世界完全犯罪白書』 ©黒銘菓/YUZU comics/DNP

ライトアニメが持つ可能性

これまで、中小出版社にとってのアニメ化・実写化は、ヒット作が出たその先に、代理店や制作会社などから話がやってくるものでした。

しかし 、この1〜2年で状況はまったく変わると予想しています。アニメを作るための人件費を含めたコストは年々高騰しています。制作費が上がれば、その分出資額は上がりリターン自体は今まで通りなので結果として利益を圧迫する。資本力のある企業しか、製作委員会に参加することのできない状況が生まれています。

さらに、アニメ制作スタジオはどこも3年先、4年先まで制作作品が決まっている、といわれます。今、アニメ化の企画を立ち上げても、実現は最速で2027年以降になる。作品の勢いがあるうちにIP化するには、連載スタート時から、アニメ化・実写化を視野に入れて動く必要がある、ということです。

こうした現実を考えると、今後、アニメ化の対象となるのは、資本力と回収力のある大手出版社の作品に限られるであろうことが容易に予測できます。

そこで希望の星となるのが、第三極ともいえるライトアニメ。

従来型アニメの10分の1の予算で作れるライトアニメなら、資本力のない中小出版社刊行の作品もアニメ化できる可能性があります。

出版社同士でも協業しながら、多くの作品を映像化していきたい。イマジカインフォスが、その扇の要の役割を担えたら、と考えています。

また、株式会社TypeBeeGroupより、ゲーム小説サービス「TapNovel」事業を譲受したのもこの一環です。
TapNovelは本来テキストで読む小説を、キャラクターと背景のイラストの組み合わせでビジュアライズし、さらに音声やアニメーションエフェクトによる演出表現によって、アニメを見るようにストーリーを楽しむことができるサービスです。
TapNovelにある動画生成機能をはじめ『IPの種』を作るためのプラットフォームと考えています。

おもしろい作品をもっと世の中に出していく場を作る。それも日本だけでなく、世界に向けて発信していく。低予算で制作できるライトアニメやゲーム小説サービスなら、実験的な作品、演出、制作手法にも貪欲にチャレンジできると考えています。

イマジカインフォスが手がけるライトアニメやゲーム小説サービスに、ぜひご注目ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。



本記事は2024年1月に実施したインタビューをもとに掲載しております。



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