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IPのヒットは時の運。だから僕は人に賭ける|イマジカインフォス社長・前田起也インタビュー#1

シリーズ累計発行部数3,100万部※を突破し、現在日本テレビ系列で放送中のTVアニメ『薬屋のひとりごと』。 本作品の原作小説の出版社としても注目される、イマジカインフォスもIMAGICA GROUPのグループ会社です。
2023年4月に主婦の友インフォスから社名変更をし、同時に前田起也が代表取締役社長に就任しました。
「本が売れない!」と叫ばれるようになって久しい出版業界に、前田はどんな未来を描くのか。3回連載の第1回は、前田の仕事哲学をひもときます。

※2024年1月時点。原作小説及びコミックス2作品の発行部数累計となります。 

ヒットの第一条件は「多作」

株式会社イマジカインフォス 代表取締役社長  前田 起也(まえだ たつや)
Profile:1995年に主婦の友社に入社。ファッション誌「mina」副編集長、「cawaii」編集長を経て、書籍部門へ。美容・ファッションを中心に多ジャンルの編集を手がける。2014年より取締役に就任。2019年に主婦の友インフォス(現・イマジカインフォス)の常務取締役に。2023年4月より現職。

1995年に主婦の友社に入社して以来、編集ひと筋。部長、役員と役職に就いてからも、編集業務は手放さず、イマジカインフォスの代表取締役となった今も担当作を持っています。

これまで多くの作品に携わってきて思うのは、「ヒットするかどうかはその作品が持っている運である」ということ。作品としてすぐれているからといって、必ずしも売れるわけではない。ましてや、人気のある人、フォロワーの多い人、販売実績のある人の作品ならヒットするというような、単純なものでもありません。

だからヒットを出すためには、多作でなければなりません。
狙って打てるものでないなら、数多く打席に立つことがまずは重要。
1作目が売れなかったからといって、それで判断するのは早い。多くの人の心をつかむ運を持ち合わせているのは、2作目かもしれない、5作目かもしれない。「この人の本を出したい」と信じたなら、とことん信じ続ける力が必要です。

エンタテインメントの基本は人間

僕には、「この人の言うことなら無条件でやる」と決めている人が何人かいます。ヒーロー文庫 を立ち上げた敏腕編集者・高原秀樹もその一人。彼の言うことなら、企画内容がよくわからないうちから「OK、やろう」と言います(笑)。

GOサインがあまりに早いので、びっくりされることも少なくありません。基本、3秒でOKを出しますから。それはなぜかといえば、その人に賭けているから。見るべきは、作品や企画よりも、人間エンタテインメントの世界の基本は人である、というのが僕の信条です。

これまで自分が携わってきた企画、作品を振り返ってみても、突き抜けた結果を残してくれたのって、「この人、おもしろい!」って人に惚れ込んだとき。あるいは「この人の頼みだから、よくわからないけどやってみよう」と、手探りで走り出したとき。ミリオンセラーになったものはすべて、自分以外の何らかの作用が加わっているんです。

人を信じ、人に賭けるということは、前述の「多作」ともつながっていきます。信じた人との作品を、数多く、継続して、世に出し続ける。おいしいとこ取りではなく、丸ごと一緒に引き受けるということです。上司に反対されようが、会社に反対されようが、信じた人を守って一発屋にさせない。
そのためには決裁権を持つのが近道。僕が早くから決裁権を持ちたいと意識したのも、「人に賭ける」仕事を貫きたかったからです。

投資できる余力を持つ

『薬屋のひとりごと』や『異世界食堂』など、ヒーロー文庫からコミカライズされる作品も多い。

おいしいとこ取りをせず、信じた人に100%賭ける。
こんなことをいうと、利益が上がらなければビジネスとして成立しないではないか、という疑問の声も聞こえてきそうです。
それは当然。いま、弊社が、ある意味で目先の採算度外視で「この人、おもしろい」と信じたものに取り組めているのは、一方で安定的な事業があるからです。

今年創刊30周年を迎える『声優グランプリ』は、月刊の声優雑誌としては唯一無二の存在。さらに、累計発行部数3,100万部を誇る『薬屋のひとりごと』をはじめ、数々の人気作を輩出し続ける「ヒーロー文庫」は、いまや会社を支える屋台骨です。

いま、僕たちが力を入れているIPビジネスは、特にギャンブル要素の強いものだと思っています。小説や漫画、雑誌ブランドなどのIP(知的財産)を活用し、映像化、舞台化、イベント開催などに展開するIPビジネスは、時勢やタイミングなど、運に左右されるところも大きい。
IPで成果を上げようと思うなら、投資できる状況を作り続けないといけないと考えています。例えば、Netflixをひらくと、膨大な数の映像作品が観られる。でもその中で誰もが知っている作品となると、非常に限られてくるはずです。

100打席のうち、97打席は三振でも3打席ホームランが出ればいい
IPって今後はより格差もつくビジネスモデルになっていくと思います。
僕の役割は、会社のみんなが空振りを恐れずに打席に立てる環境を作ること。収益の上がる事業と、投資する事業の両輪を回してくことが、重要だと考えています。

次回は採用と人材育成をテーマでお届けします。
最後までお読みいただきありがとうございました。



本記事は2024年1月に実施したインタビューをもとに掲載しております。



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