見出し画像

お客様の求めているその一歩先を見通す I フォトロンのハイスピードカメラ

こんにちは。IMAGICA GROUP 公式note編集部です。
当社グループでは”映像”を軸に、エンタテインメントと産業の2つの分野にて事業を展開しています。

産業分野を担っているグループ会社のフォトロンでは、4K解像度を実現した超高解像度でありながら、手のひらサイズのコンパクトな高速度カメラ「FASTCAM Mini R5-4K」を7月11日(木)に発売しました。
今回は企画、開発に携わった2名の担当者にインタビューを実施。前編ではこのハイスピードカメラの新製品の機能や開発の裏側をご紹介しました。
後編では、ハイスピードカメラにかける想いや未来についてお届けします。

プロフィール:(写真左から)
本川 浩昭( ホンカワ ヒロアキ):株式会社フォトロン イメージングソリューション事業本部 製品企画部 FASTCAM戦略グループ。 2003年に新卒入社。ハイスピードカメラを制御するソフトウェア開発のエンジニアを15年ほど経験した後、自動車業界のお客様へ直接カメラを納品したり技術のサポート業務にも従事。開発と現場での経験を活かし、現在はハイスピードカメラの製品企画を担当している。

高橋 諒(タカハシ リョウ):株式会社フォトロン イメージングソリューション事業本部 設計開発部 ハードウェアグループ 回路チーム。理学博士。2012年に新卒で入社して以来、ミドルレンジ帯のハイスピードカメラ(FASTCAM SA、mini、Novaの各シリーズ)の設計、開発に携わっている。

求められている性能と設計を両立させる難しさ

ーー本川さんはソフトウェア開発から企画職に転身されたわけですが、きっかけはありましたか?

本川)ソフトウェアエンジニアとして15年ほど開発に携わっていたときは、現場で使用されているお客様の声は、営業や技術の担当者経由でしか入ってこなかったんです。当時、ソフトウェアエンジニアというと直接お客様の元に出向く機会はないに等しかったんですよね。開発に携わっているからこそ、お客様はどこで困っているのか、なにを改善したら利便性を高められるのだろう、直接声を聞いてみたい、という想いはずっとありました。企画に移動してからは、どんな提案をしたらいいのかを考えて、お客様の生の声を拾って、開発に伝えることができる。製品企画に携われる嬉しさを実感しています。

ーー企画と開発で意見が対立することもありますか?

高橋)私たち開発陣は、企画側から提示される「製品要求仕様書」に基づいて設計をしますが、お客様が求めている性能と設計を両立させることの難しさはいつも抱えています。もちろんお客様のご要望を叶えたいという気持ちでいっぱいなのですが、お客様のご要望100%を満たすと、この大きさに収まらない…。取捨選択の連続です。企画側から堅持してほしい機能のリクエストをもらいつつも、設計的に、時間的に、性能的に…といった観点から難しいよなぁ…と頭を悩ませています。詰め込もうと思えば、高い性能を入れ込むことは簡単なのですが、折り合いをつけるのは難しいです。

本川)開発期間が長くなりすぎるなど制約はあり、その中でできること・できないことで話し合っていってますね。

高橋)市場に早くリリースすることも重要ですよね。時間がかかると、お客様の需要が変わる可能性もある。開発期間をむやみに延ばすわけにもいきません。

開発の高橋さんのデスクにて試作品が作られていく

本川)カメラ自体も決して安いものではない(※)ので、一度ご購入いただいたあとに、すぐには入れ替えられない。その時にお客様がほしい性能にプラスα、付加価値をつけて売り出すことを目標にしています。

高橋)お客様の使い方にもよりますが、だいたいハイスピードカメラの耐久性は10年ほどでしょうか。ただし、作って終わりではなく、リリース後も使いづらい点や操作が難しい部分などはアップデートで対応できるよう心がけています。
また、開発にとって重要な作業は機能などの設計以外にも、工場に製造移管する際に「誰でも作れる」仕様に落とし込むということが挙げられます。開発段階で、製造を視野に入れて「作りやすい」ように設計する必要があります。

(※)フォトロンのハイスピードカメラは製品にもよりますが、だいたい200~1,000万円ほど。

あらゆる高速現象を可視化して、お客様の潜在ニーズを顕在化

ーハイスピードカメラは今後どう進化していくと考えますか。

高橋)さまざまな撮影環境にも適用しやすいので、小さくて軽いというのはどのお客様にとってもメリットがあります。撮影対象によって、搭載する性能が異なるので、そちらに合わせて大きさは変わっていきますが、今後も小型・軽量は堅持したまま、性能だけをアップグレートさせていきたいですね。

本川)今後はカメラ単体ではなく包括サービスとしても拡がっていくと考えています。「ボリュメトリックキャプチャ」という技術はご存知の方も多いのではないでしょうか。数十台のカメラを用いて撮影し、被写体を3次元のデジタルデータとして処理して3D映像を作り出す技術です。フォトロンでは普通のカメラではなく、ハイスピードカメラで撮影し、3Dモデル動画化を可能にする「High Speed Volumetric Capture(以下、HSVC)」というサービスも提供しています。

本川)昨今、デジタル開発がすごく注目されていますよね。現象をハイスピードカメラで撮って解析し、それをCAE(Computer Aided Engineering)※に置き換えて、解析シミュレーションの中で現象を解き明かし、開発していくという流れは、今後ますます加速していくのではないかと思います。カメラの高解像度化が進めば、その結果をCAEの精度向上に役立てることで、CAEの中でも現象をより詳細に解明できるようになります。ハイスピードカメラで撮影した映像を解析ソフトを通じて三次元化し、お客様の研究開発をさらに加速させられたら嬉しいです。

※CAE…コンピューター支援エンジニアリング。製品の開発・設計において、コンピューター上で技術計算やシミュレーション、解析を行うシステム。

高橋)本川さんのお話の通り、お客様からしたら、ハイスピードカメラは「測定器」。情報を得るための装置でしかありません。時代が経つにつれて測定・計測したいものが変わっていく、あるいは増えていく。そうするとだんだんカメラからこういう情報を得たい、こういうものが見えるようにしてほしいという要望も増えたり変わっていったりもする。それに対応できるようなカメラ単体、あるいはシステムとして構築し、お客様がほしい情報に応えられるよう提供していきたいと思っています。

本川)まさに、お客様が欲しいのはカメラや撮った映像ではなくて、「そこでいったい何が起きているのかを知る」ということだと思うので、そこをセットで解き明かすことができるようなシステムにしていきたいですよね。(ハイスピードカメラは)その情報を得るためのデバイスでしかない。このカメラを入力装置としてセンサー的なシステムを構築し「お客様の見たい・知りたい事象を可視化」していくことがフォトロンの役割だと思っています。お客様もまだ気付いていないニーズを先回りして製品仕様に盛り込む。お客様の課題解決のお手伝いをしていきたいと考えています。

—IMAGICA GROUPでは、これからも“映像”を軸に、新たな価値創出に挑戦してまいります。
最後までお読みいただきありがとうございました。


本記事は2024年4月に実施したインタビューをもとに掲載しております。最新情報とは一部異なる可能性もございます。

IMAGICA GROUPの最新情報を発信しています。ぜひフォローお願いいたします!