イマジカインフォス✖️DNP(大日本印刷)「ライトアニメ」が巻き起こすエンタテインメントの新たな潮流#2
イマジカインフォスと大日本印刷が手がける「ライトアニメ®」。マンガの原稿そのものを素材として動かすという新しい手法のアニメに注目が集まっています。2024年6月に CBCテレビで放送された『まあるい彼女と残念な彼氏』に続き、第2弾作品となる『未来の黒幕系悪役令嬢モリアーティーの異世界完全犯罪白書』が同年7月19日(金)より、同じくCBCテレビで放送が始まっています!
急速に成長するライトアニメビジネスについて、AnimationIDプロジェクトメンバーがたっぷり語り倒します!
『未来の黒幕系悪役令嬢モリアーティーの異世界完全犯罪白書』ティザーPV
※Animation IDはイマジカインフォスとDNPが進める「ライトアニメ®」プロジェクトです。
収益を上げるための座組を作る
前田:ライトアニメプロジェクトAnimation IDの特異な点のひとつに、出版社であるイマジカインフォスと印刷会社である大日本印刷(以下DNP)が、共同で製作委員会の主幹事をしている、ということが挙げられると思います。
川村:主幹事の経験のない2社ですからね。かなりめずらしいですよね。
前田:製作委員会の主幹事とは、総合プロデューサーの役割。予算を決め、配信や放送、グッズ販売などによる収益を分配するという大きな役割があります。製作委員会の中心に立って出資をしていく理由は、やはりリターンを求めているからこそですね。DNPさんとは長い付き合いですけれど、IP(知的財産)に対して出資をするということは、これまであまりしてこなかったですよね? 大きな変化を感じています。
端山:そうですね、過去にはあまり例がありません。ただ、印刷の受託業務だけでは今後、企業として大きな成長は望めないという危機感もあるなかで、もっとコンテンツに関わっていこうという機運は高まっています。
前田:意思決定も早いし、まるでひとつの会社のように回っているのが、ちょっと不思議な感覚です。IMAGICA GROUPとDNPって、事業領域こそまったく重ならないものの、企業体質にはどこか似たところがあるんですよね。受託側としてのプライドというか、受けた仕事をめちゃくちゃ誠意と責任感を持って完遂する、という。我々のチームがうまく機能している背景には、そんなところもあるのかな、なんて思いますね。
強固な信頼関係を背景に
川村:ライトアニメ事業の立ち上げ時には、なぜイマジカインフォスとDNPがアニメを作るのか、という声も聞かれましたよね。
前田:僕たち出版社とDNPって、それこそ100年以上にわたって一緒に仕事をしてきていて、コンテンツ作りのルートができている。出版社が原稿を入稿し、DNPが印刷をする。ライトアニメの素材はマンガ原稿ですから、素材となるデータはすでにDNPにあるわけです。
端山:DNPからすると、コミックにしてもライトアニメにしても、元素材は一緒。どちらも原稿データですからね。原稿を入稿する出版社に対して、「紙に印刷する」「電子書籍にする」という従来の方法に加え、「動画にする」という3つめのソリューションができた。DNPが保管する原稿データを、イマジカインフォスで映像制作するという一貫したラインを作れたことが、事業化の大きなポイントですね。
川村:出版社としては、大切な原稿データの取り扱いには細心の注意を払わなければならないもの。DNPが持っているデータをそのまま活用するということで、マンガ原作の出版社にも安心して任せてもらいやすい、ということもありますね。
少数精鋭のプレーヤーで高い収益を目指す
前田:Animation IDのもうひとつ特異な点は、これまでに発表した2作とも当社が原作を刊行する作品ではない、ということ。もちろんウチの作品もアニメ化したい。でも、イマジカインフォスだけが果実を得るのではなく、中小出版社のみんなでよい作品を世の中に届けていくんだ、ということをまずはアピールしたかったんです。そして、僕たちのこの発信を正しく受け取ってくれた人たちからの反応は、ものすごく速いです。国内、海外関係ないですね。
端山: テレビ放送に真っ先に手を挙げてくれたCBCテレビ も「これは絶対にテレビ放送するべきです!」と弊社まで直接お越しくださった。また、あるテレビ局の幹部の方が、「これからはショートドラマ、ライトアニメの時代になる」と、協業できそうな企業を紹介してくださったこともあります。センスのいい方、ノリの合う人たちが助けてくれますね、この事業は。
前田:逆に、ノリの悪い人とは絶対に一緒にやらない、と決めています(笑)。ライトアニメの可能性に共感してくれるところと手を携えていきたい。『まるカノ』の製作委員会は、そのいい形です。『まるカノ』は名だたる配信プラットフォームで観ることができますが、これはdアニメストアさんの尽力のおかげ。広く出資を募るのではなく、収益を上げるために協働できる企業とだけ手を組んでいきたいと思っています。
世界に通用するコンテンツへ
前田:海外からの問い合わせも多いです。ただ、海外においても、国内と同じくAnimation IDのコントロール下で行いたい。海外でマーケティングをし、きちんと収益を上げるためのベストな方法を探っているところです。
端山:海外のコミックって基本的にフルカラーなので、ライトアニメには向いていると思うんですよね。
前田:世界に輸出できるコンテンツにするというのは、企画当初からの目標ですからね。想定より早く、世界へのステップを踏んでいると感じています。まず、第1弾作品である『まあるい彼女と残念な彼氏』の放送開始から1か月で、相当に認知は高まりました。今後は、さらにAnimation IDのブランドを固め、よりライトアニメという手法が生きるジャンルを確立してく段階に入ります。これにより、世界に通用するコンテンツは何かということが、より明確に見えてくるだろう、と。
川村:第1弾はラブコメ、第2弾は異世界ミステリー、そしてこれから控える第3弾はまた違ったジャンルの作品です。すべてジャンルの違う作品を放送していくのもひとつのトライアルですね。
端山:狙ったわけではないですが、結果的に綺麗に分かれました。
高橋:コミカルなギャグテイストの作品や動物が主役のもの、絵本などもライトアニメ向きかもしれません。人って、人間の動きには敏感で、不自然なところがあるとすぐに違和感を覚える。一方で、動物の動きって、多少粗いところがあっても案外気にならないんです。
川村:『まるカノ』もそうですけれど、ラブコメも向いていますね。原作マンガの絵がそのまま動くので、繊細なタッチ、世界観がブレません。これまでアニメ化は難しいと思われていた作品が、ライトアニメによって映像化されていくのではないか、と期待しています。
次回はライトアニメ制作のスピード感や手法など、裏側に迫ります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事は2024年7月に実施したインタビューをもとに掲載しております。最新情報とは一部異なる可能性もございます。