社員と共に足りないパーツを埋め、皆が誇れる会社を|オー・エル・エム社長・釜 秀樹インタビュー#3
IMAGICA GROUPのグループ会社で、『ポケットモンスター』シリーズや、『オッドタクシー』『薬屋のひとりごと』など、大人気アニメーションの制作を手掛けるオー・エル・エム。2024年4月より、釜 秀樹が代表取締役社長に就任し、さらなる飛躍にむけて新しいスタートを切りました。
次々とヒット作を生み出すオー・エル・エムとは、どんな会社なのか? また、釜は、今後のオー・エル・エムにどんなビジョンを描くのか。インタビューの最終回は、オー・エル・エムと釜がめざす「理想」をテーマにお届けします。
「製作プロデューサー」の育成を
今後のオー・エル・エムは、本業である映像制作を更に確固たるものにすることが最も重要であることは間違いありませんが、「製作プロデューサー」を育成することにも力を注ぐべきだと私は考えています。
プロデューサーといっても、さまざまな役割がありますが、大きくは「制作プロデューサー」と「製作プロデューサー」に分けることができます。
制作プロデューサーの仕事は、現場の統括。監督や演出家とともに制作を進めていきます。
一方の製作プロデューサーは、資金を集め、企画やスタッフを決め、ビジネス面でのプロデュースを行うのが仕事です。製作委員会に入り、作品の収益化にも責任を持つため、ビジネスプロデューサーとも呼ばれます。もちろんそれぞれがクロスする部分もありますが、大きく分類するとそのようになります。
現在のオー・エル・エムには、優秀な制作プロデューサーが多数在籍しています。しかし、今後はすばらしい作品を作り上げるだけではなく、自らIP(知的財産)を創出し、そのIPを自ら運用していくことにも目を向ける必要があると感じています。前述の通り制作プロダクションとしてより高みを目指すことが最も重要であることは論を俟ちませんが、更に会社の幅を拡げるためにもプロデュース能力を会社として身に着けたいと考えています。
その流れで、昨年よりビジネスプロデュース部という部門を立ち上げ、陣容の拡大を図っているところです。
社員が誇りを持てる会社に
オー・エル・エムに限らず、映像業界に身を置く人たちはみな、まず根底に「映像が好きである」という思いがあるでしょう。オー・エル・エムの役員室はアニメ制作部門と同じフロアにあるのですが、そのフロアで働く若手社員の姿を見ていて感じるのは、みながこの仕事に全身全霊を賭けて毎日を全力で駆け抜けている、ということ。それは非常に美しく、そして頼もしく、誇らしいことです。
だからこそ社長としては、彼らの情熱に寄りかかるようなことがあってはならない、と肝に銘じています。「この会社で働きたい」と人が感じるポイントは、おそらくいくつもあるのだと思います。自分がどんな仕事をして、どんな作品に関わっているかはもちろんですが、職場の環境、給与を含めた待遇、ワークライフバランスといった事柄も大切でしょう。人によってその軽重に違いはあるでしょうが、経営者としてはすべてが重要だと考えるべきだと思っています。一度に全部を変えることは難しいのですが、すべてを少しずつでも今以上に上げていきたいです。やりがいを持って働けることはもちろん、心身ともに健康で安定した基盤の上で、自分自身の人生を充実させていける場所としての会社に更になっていきたいと考えています。
当社にはアニメーション以外にもさまざまな事業がありますが、すべての部門の社員がオー・エル・エムの一員であることに誇りを持てるようにしなければならない。そのためにも社員のみんなと力を合わせ、助け合いながら、足りないパーツをひとつずつ埋めていきたいと考えています。
仕事のモチベーションが爆上がりする、おすすめ映画
仕事をしていれば、落ち込むことも、悩むこともありますね。そんなときにも、私は映像の力を借りて、自分を鼓舞しています。
凹んだときにおすすめしたい1本は、『ザ・エージェント』。キャメロン・クロウ監督・脚本、主演はトム・クルーズ。
スポーツエージェントのトム・クルーズが、あることがあって会社を追い出される。ここまでが非常にすばらしい。途中から、レネー・ゼルウィガーとのいつものラブコメが始まりますけれど、最後はまた、ちゃんとお仕事モノとして秀逸!
仕事で凹んだときのモチベーション回復にはぴったりの作品です。
それから、もう1つはテレビアニメーションの『宝島』。東京ムービー新社(現トムス・エンタテインメント)制作によるずいぶん昔の作品ですが、今でも大好きな作品です。ロバート・ルイス・スティーブンソンの児童文学『宝島』を原作にした少年ジム・ホーキンスの成長物語。でも、アニメの主役は、宝物を追いかける一本足の海賊ジョン・シルバーだと私は思っています。私にとっての理想的な大人、こういう大人になりたかった、というのが『宝島』のジョン・シルバーです。まったく、正反対の男になってしまいましたけれどね(笑)。
『宝島』には、多感な子どもたちが観るジョブナイル※作品としての理想的な姿がある、と思っています。いまテレビアニメーションに携わる者としても、理想の作品です。
※ジュブナイル…少年少女・児童期といった子ども向けのという意味。
このように映像作品には、人の心を動かす力がある。私たちオー・エル・エムグループも、多くの方々の心を豊かにし、笑顔と感動をお届けする作品を提供し続けたいと決意を新たに邁進してまいります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事は2024年6月に実施したインタビューをもとに掲載しております。最新情報とは一部異なる可能性もございます。