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日韓映像の橋渡し役に聞いたリメイク映画の極意とは!? ~映画プロデューサーの仕事術|ROBOTプロデューサー 小出 真佐樹

IMAGICA GROUPのグループ会社で、エンタテインメント作品から広告コミュニケーション、最近ではデジタルコミュニケーションなど様々な分野に挑む ROBOT COMMUNICATIONS INC.  (以下 ROBOT)。同社で、日本と韓国をエンタテインメントで繋げる活動をされているプロデューサーの小出 真佐樹さん。

インタビューの第2回目は、「日本人で韓国映画界に一番詳しいのは僕だという自負がある」と語る小出さんに、日韓の映像プロジェクトを手がけることになった経緯やリメイクの極意を伺います。

たまたま入った韓国の映画館。そこには驚きの光景が…

前回お話しした『ALWAYS三丁目の夕日』のほかにも『海猿』シリーズなどの作品でアソシエイトプロデューサーを務め、『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』(2010年)、『ジンクス!!!』(2013年)のプロデューサーを経て、韓国映画の日本版リメイク『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年)を企画・制作。この作品は大ヒットし、ここから日本と韓国の映像業界の橋渡し的プロジェクトに関わることが増えていきます。

韓国映画に興味を持ったのは、2001年に東映時代の先輩からプライベートで初の韓国旅行に誘われたことがきっかけです。一人時間ができて、暇だったのでホテルの傍を散策していたら大きな映画館があって入ってみたんです。そしたら驚く光景に出会いました。

韓国人は感情の表し方がすごくて、韓国の映画館ではみんな歓声を上げて観ている。日本では到底考えられない光景でした。
ラブストーリー、アクション、コメディもあり、満席続きでヒット作のチケットが買えない時代でした。

その時に韓国語がまったくわからずに観た『友へ チング』(2001年)が面白く、そこから韓国映画にハマり、日本の韓国語学院で3年間勉強も始めます。
金曜に仕事を終えると成田からの最終便で韓国へ行き、到着次第すぐ東大門 トンデモンにある24時間営業の映画館で映画を見続け、帰国するような週末の弾丸鑑賞旅行が増えていきました。

韓国映画通として、日韓映像業界の橋渡しに

Profile:1967年生まれ。映画会社東映宣伝部で『藏』『きけ、わだつみの声』『(旧)新世紀ヱヴァンゲリヲン劇場版』『ラブ&ポップ』『溺れる魚』など12年間宣伝を担当。 2000年に制作プロダクションROBOTに入社、同社初の幹事、配給映画『Laundy』をはじめ、『海猿』『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズなどROBOT制作映画のアソシエイトプロデューサー業務を12年にわたり行う。現在は日韓映像業界の懸け橋となる仕事を担当、映画のみならず日本の小説、コミックス、演劇を韓国の制作プロダクションと業務契約をし、韓国映像、演劇化をする事業も展開中。

韓国で岩井俊二監督や是枝裕和監督などの作品の認知度は高く、ROBOTは『LoveLetter』(1995年)や映画『踊る大捜査線 THE MOVIE』(1998年)を手がけた会社として業界内では広く知られています。

週末に韓国へ行き続けるうちに、「日本の映画人で、韓国映画をよく観ている人がいる」と知られるようになり、韓国の映画産業支援を担うKOFIC(韓国映画振興委員会)から、「釜山国際映画祭併設のマーケットで日韓共同制作に関し、韓国のプロダクションとミーティングしてほしい」と頼まれます。

そこから数年釜山に招待されるようになり、次第に私の存在も韓国映画界で認知されていき、その流れで実現したのが講談社さんの原作を韓国映画化した『リトル・フォレスト 春夏秋冬』(2018年)です。そして、次第に日本IPの韓国映画化の相談が持ちかけられるようになりました。

現在までにすでに7作品(『藁にもすがる獣たち』『紙の月』『スマホを落としただけなのに』『旅屋おかえり』等)の日本IP韓国映像化を成立させ、これからも10作ほど控えています。

2020年12月には、ROBOTとして、日本の小説やコミック、戯曲など幅広い話題作のIPコーディネート業務を手がける専門チーム「J-KIP」(Japan-Korea IP Coordinate Team)を設立。日本IPの韓国での映像展開やコンサルティング事業を手がけるようになりました。

実質僕一人で通訳を介さずにおこない、契約に関することは社内の法務担当の方に支えてもらっています。これまでのプロデューサー経験で日本の大手出版社の担当者との人脈もあり、事情もわかるので進行は早いですね。

韓国の映画関係者から日本IPの映像化を打診されれば日本の出版社と相談し、日本の出版社から「韓国から映画化の話が来ている」と相談されれば、その会社の実績を調べてアドバイスします。

僕はトラブル起きたときに原作者の方が悲しむようなことはしたくないので、韓国側に「そんな生半可な覚悟で日本の出版社と契約できない」と言うこともあれば、権利料支払が滞ることがあれば取り立てにも行きます。

リメイクするなら、もっと面白くしないと意味がない!

韓国映画は、設定が面白い作品が多いんです。
『22年目の告白 -私が殺人犯です-』の原作『殺人の告白』は、連続殺人犯が時効後に書籍を出版し堂々と人前に出てくる話、『見えない目撃者』の原作『ブラインド』はひき逃げ事故に居合わせた盲目の女性が、目撃者である青年と協力し、女子大生失踪事件を調査していく話。『最後まで行く』は、序盤から刑事が人をはねてしまい次から次に面倒な出来事が重なり、その死体を隠さざるをえなくなる話。

日本版にリメイクするためには、元の映画では、やっていなかったことをする、そしてもっと面白くするという気持ちで企画・制作しています。

リメイクする上で気を付けているのは「作品の本質」はどこにあるのかという視点その作品の芯、軸といえる部分をブレさせないように、作品の面白さは何なのかというのは壊さないようにしています。

実際に現地の映画館に足を運んで、観客がみんなで笑ったり声を上げたりしているシーンがわかっているので、本質を捉えているんだと思います。

極端にいうと、誰か一人に刺さればいい

ヒップホップ・グループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー宇多丸さんがパーソナリティを務めているTBSラジオの番組に、映画評論コーナーがあります。宇多丸さんは映画コメンテーターとしても活躍される方。

そのコーナーで、『見えない目撃者』(2019年)が、「リスナーが選ぶリメイク映画ベスト1」に選ばれたんです。

吉岡里帆さん演じる盲目の主人公が仕掛けた罠を犯人が踏んで、その音で犯人の位置がわかるというクライマックスで、監督のアイデアで1分間無音にしました。その1分があって、チリンと鈴が鳴る音が効果的に響く日本版独自の展開ですが、この脚色をとても気に入ってもらったんです。

さらにうれしかったのは、後に宇多丸さんが、「前にこの番組でリメイクベスト1になった『見えない目撃者』と、僕が好きな『22年目の告白 -私が殺人犯です-』と『最後まで行く』は、どれも小出さんっていう人が関わっているんだね」と気付いてくれたことです。「わかってくれましたか!」という気持ちですよ。たとえ映画が大ヒットとまでいかなくても、一人でもそこの制作における特性をわかってくれる方がいれば、プロデューサー冥利に尽きるというものです。


次回は「プロデューサーは大変なことしかない。でもなぜかやめられない」と語る小出さんに、プロデューサーとしての極意を「結婚して家庭をつくること」にたとえていただきましたので、お楽しみに。

ROBOTの事業領域は、CM・ウェブ・劇場映画に始まり、近年はグローバル配信ドラマ・XRコンテンツ・大型アトラクションなどへと広がっています。
社内には様々な部門、様々な業務があり、随時募集を行っております。
ご関心があるようでしたら、こちらのリクルートサイトもご覧ください。

本記事は2024年11月に実施したインタビューをもとに掲載しております。最新情報とは一部異なる可能性もございます。


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