イマジカインフォス✖️DNP(大日本印刷)「ライトアニメ」が巻き起こすエンタテインメントの新たな潮流#1
イマジカインフォスと大日本印刷が手がける新しいエンタメの形、「ライトアニメ」が注目を集めています。制作費は一般的なアニメ作品の1割程度の上、制作スピードは企画立ち上げからほぼ半年で放映可能という、超低コストかつ早期のアニメ化が可能でありながら、その映像表現は目の肥えたアニメファンからも高い評価を得ています。6月にテレビ放送がスタートした『まぁるい彼女と残念な彼氏』 も好調! 続く第2弾作品として、『未来の⿊幕系悪役令嬢モリアーティーの異世界完全犯罪⽩書』(原作:⿊銘菓 /YUZU comics/DNP)が、2024年7⽉19⽇(⾦)よりCBCテレビで放送開始。勢いに乗るライトアニメプロジェクト「Animation ID※」のメンバーが、ライトアニメの誕生秘話や今後の可能性について思いの丈を語ります!
※Animation IDはイマジカインフォスとDNPが進める「ライトアニメ®」プロジェクトです。
ライトアニメの実力を立証する『まるカノ』旋風
川村:Animation IDの第1弾作品となるテレビアニメ『まぁるい彼女と残念な彼氏 』(以下、まるカノ)は、CBCテレビのほか、dアニメストア、TVer、ABEMA、FODなどなど、多くのプラットフォームで配信されています。深夜1時56分からの放送にもかかわらず、視聴率は2週目で1.6%と好調。さらにTVerでは、4回目の放送が再生ランキングの10位以内に入っていました。
前田:数億円の制作費をかけている作品が並ぶなかで、10分の1のコストで作ったライトアニメがランキング上位に入っているというのは、価値の転換ともいえる現象ですよね。
端山:原作はLINEマンガで連載中ですが、原作漫画のほうにもいい波がきています。アニメ放映前は約8000万viewsだったのが、今、9000万viewsに迫ってきていて、放送初日にはLINEマンガの『まるカノ』新規ユーザーが4%も増えたそうですよ。
前田:通常、地上波の1シーズンで放送されるアニメ作品は70〜80本。アニメ化したからといって、必ずヒットするわけではないし、原作漫画が売れるわけでもない。そうしたなかでの『まるカノ』の視聴率、再生ランキング、さらに原作漫画のview数増加は非常に評価できる数字だと感じています。
視聴者に選ばれるアニメの条件とは?
端山:視聴率でいうと、初回よりも2話目のほうが伸びたんですよね。「ライトアニメってどんなもんだ?」という興味本位でのぞくだけだったら、2回目以降の視聴はないと思うんです。4話目、5話目になっても数字が落ちていないのも、うれしい驚きです。
川村:テレビ放送 前には「漫画の原画を動かすなんて、どうせ紙芝居レベルだろう」といったネットの書き込みも多かったんですよね。ところが、放送が始まってみると「普通にアニメだった」「万莉子ちゃんかわいい!」といった肯定的な口コミのほうが断然多くて、一同安心しましたね。
前田:コミック原稿がベースになっているライトアニメの手法を説明すると、どうしても紙芝居のような映像をイメージする人も多かった。でも、僕たちはアニメ作品として自信を持てるものを作り上げてきていて、なんとかそのイメージを払拭したかったんです。だからこそ、地上波のテレビ放映を最初の目標に動いてきた。
端山:テレビ放映されているということが、ライトアニメのブランド力を高め、信頼感を増してくれるだろう、という思惑がありました。
前田:実際に蓋を開けてみると、深夜帯にもかかわらず視聴率も及第点をクリアし、さらに配信によって多くの視聴者に届いている。制作手法やかけた予算ではなく、純粋に作品の強さが大事なんだな、と改めて実感しています。国内配信はdアニメストアさんが全面協力してくれていて、今のところその他にも20社ほどで配信されています。
高橋:アニメーションは、世界観とキャラクターとストーリー構成でされています。この3つをちゃんと見せることができれば、ライトアニメでも受け入れられるということが、今回よくわかりましたね。
前田:アニメ業界に身を置くプロフェッショナルの方々からも評価をいただくことが増えていて、それも心強い。今後のアニメ作品では、細部にまでこだわって作り込んだ綺麗な作画のハイエンドなものと、我々のライトアニメのようなコストと時間が非常に効率的な制作手法によるものとに二極化し、中間は淘汰されていくのではないか、と予想しています。
ライトアニメのスタートは2人から
前田:ライトアニメプロジェクトのそもそもの始まりは、今から3年ほど前。実験的に行っていた、BL(ボーイズラブ)漫画に声を入れる、という試みがベースにあります。吹き出しをはずして、セリフを声優さんに当ててもらって、これはいけるんじゃないかという手応えを得ていたんです。
端山:ちょうどそのころ、大日本印刷(以下DNP)でも新規事業創出が課題としてあり、イマジカインフォスさんと思惑が一致。「WEBTOON(ウェブトゥーン)に音声を組み合わせたら、アニメになるのではないか」と。
前田:2011年前後には吹き出しがついている状態で(他社でも)こうした試みは既に行われていた。我々も「YouTube」でのレベルはできたけれど、それでは誰でも真似ができる。視聴者に納得していただけるクオリティを見定めようと、試作品をどんどん作って検証をしていきました。
高橋:レイヤー分けされた漫画の原稿からセリフの吹き出しなどをはずして、コマとパーツに切り出します。その後、加筆や着彩をし、モーションを加えて動画にしたのが、ライトアニメ。手法自体はカットアウト・アニメーションといわれるもので、目新しい技術ではありません。
端山:いやー、でも最初は苦労しましたよね。髪の毛をサラッと揺らすのにも、頭全体が動いているみたいになっちゃったりとか(笑)。
前田:1コマずつああでもない、こうでもないとやってた。どうにか技術的にも可能だろうとわかったところで、当時、グループ内の別会社でアニメ制作を手掛けていた事業部を丸ごと事業譲受して、制作ラインをちゃんと作ることにしたわけです。そこでプロジェクトに、今、ライトアニメの制作統括をしてくれている高橋さんがジョインした。
端山:最初の「紙の原稿が動いた、すごい!」というレベルから、高橋さんがチームに入ってくれて物語が動くようになって。
前田:アニメだけでなく映像制作全体に深い知見を持つ高橋さんがチームに加わってくれたことは、このプロジェクトが前に進むポイントでしたね。誰もやったことがないので、すべて仮説検証の繰り返し。韓国指折りのWEBTOONの工房を見に行ったり、地方に人材を探しに行ったり、今も続けています。
制作費は10分の1でもクオリティは遜色なし!
川村:ライトアニメの制作費は、一般的なアニメの1割ほど。ただ、低コストだからといって、手を抜いているわけではないんですよね。
高橋:ライトアニメの場合、作画の作業はありません。それは、アニメ制作でいうところのセル画に相当するものが、漫画の原稿データそのものだからですね。ライトアニメが圧倒的な低コストで作れる大きな理由です。
川村:原作の絵を生かして動かすという手法だからこそ、原作世界のイメージを損なわずにアニメ化できる。この点も大きな魅力ですよね。
高橋:ただ一方で、作画をしないということは、原作漫画にない絵やシーンは存在しないということで、制限も多いんです。原作漫画から切り出した素材を、いかに料理し、どこに見せ場を作っていくか。構成、演出を担当する監督の力量が問われる仕事です。
前田:原画を違和感なく動かしながら、さらに声優さんの声と音楽、音響効果によって 世界観を作って。声優さんのキャスティングも雑誌「声優グランプリ」を編集しているイマジカインフォスならではで、通常のアニメと遜色ない皆さんが揃っています。また、オープニング、エンディングの楽曲も非常に世界観にマッチしています。
端山:原作制作をされているuna toon studioの皆様がまるカノの収録立ち会いに来てくださったんですけれど、非常に感動していただきました。また、声優さんたちも、新しい手法のアニメだからと二の足を踏むことなく、積極的に出演してくださる。関わってただいた皆さんが、みんな幸せになれているんじゃないかな、と感じています。
前田:今後、さらにライトアニメの認知が高まれば、漫画家さんもより安心して任せてくれるでしょうし、声優さんの活躍の場も広がる。また、まだ日の目を見ていない名作や、我々のような中小出版社が持つ作品もアニメ化することが可能になる。また、例えばインドでは多くの若者がスマホでアニメを見ているという現状があったりするんです。ライトアニメはスマホで見るのにも向いていると思っているので、いつかインドでもライトアニメを見てもらえるのではないか、という思いや、韓国の大ヒットWEBTOONを世界に配信していくということも将来的には可能になると思っています。
ライトアニメはアニメ制作の手法にとどまらず、ビジネスフレームとしても大きな可能性を秘めています。
AnimationIDによるライトアニメ第二弾『未来の黒幕系悪役令嬢モリアーティーの異世界完全犯罪白書』は2024年7月19日(金)CBCテレビにて放送開始です。
次回は制作体制や、地上波テレビをはじめ多数のプラットフォームで配信された理由などに迫る予定です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事は2024年7月に実施したインタビューをもとに掲載しております。最新情報とは一部異なる可能性もございます。